2012/12/15

そして、だれもオカネを使わなくなった。塩野七生 文藝春秋から

(以下引用)
モンティの緊縮策は日本の仕分けなどと甘っちょろいという厳しさだが、その結果失業者の増大になって跳ね返された。しかも労組が強いイタリアでは、失業手当数年もつづけて払われる。その費用は、もちろん国庫から出る。つまりモンティ内閣は、カネがいくらあっても足りないという現実をどうにかしなければならなくなったのである。
 日本ではまだ導入されていないが、イタリアでは俗に「国民総背番号制」と呼ばれるものが以前から存在した。居住者の一人一人の経済活動を把握するための制度で、私のようにイタリアでは経済活動をしていないものでも持たされ、銀行口座を開いた際には提示を求められたものだ。
 ただし、この制度を始めたそもそもの目的はマフィアなどの闇マーケットを探し出すことにあったので、検察が要求してこないかぎりは銀行には、顧客の口座の内容を財務省に報告する義務はなかった。それをモンティ内閣は来年から、年に一度の報告を銀行側に課すと決めたのである。これまではマフィア関係にのみ張られた網が、これからは全員に張り巡らされるわけ。しかもこれは、来年を待たずにすでに始まっている。権限とは、誰かがブレーキをかけなければ自然に拡大していく性質を持つ。そしてモンティ内閣は、ブレーキどころかアクセルを踏んでいる。やましいことをしていないなら恐れることはないでしょうとは、言うは簡単でも胸の思いは簡単ではない。なぜいま自動車を買い替えるたのか、そのカネはどこからきているのかといちいち問いつめられても気分を害さない人なんて、どれだけいるだろう。
 また、国民総背番号制の導入を唱える日本人の言うような、徴税業務が簡単になり、それによって課される税も納税者が納得いくものになるというメリットも、イタリアではまったく見られない。なにしろ税の業務からして、財務省から委託された私営業者が行う。しかもこの人々は脱税全滅を公約したモンティ内閣の出現以来とみに元気づき、私営業者に委託したとたんに駐車違反による罰金の徴収が市の重要な財源になったのと同じ現象が、徴税業務でも起きているからだ。それでいて、この業務を国に代わって行うことで私営の税務署がフトコロにする請負料がどれくらいの割合なのかは、駐車違反摘発のケースと同様に一切公表されていない。
 これ以外でも、モンティの登場以来、あらゆるものに課される税が増えた。消費税は22%になりそうだし、税率の高いガソリンは1リットル200円前後をウロウロ。固定資産税も、資産価値の評価がいきなり上げられたので、以前の2倍は覚悟しなければならなくなった。その結果、不動産業界は二割減、自動車は、中古市場をふくめても三割減、つまりイタリア人は、おカネを使わなくなってしまったのだ。将来への不安からだけではなく、いちいち釈明を求められ、そのたびに古い領収書まで探さねばならないという状態への、嫌悪の想いもあるのではないか。なぜなら、税金で取られるくらいならば使っちゃおう、という空気にもなっていないのだから。
 しかし、買わなくなれば売れなくなる。売れなければ廃業するか、廃業しないまでも雇用は減らすしかなくなる。イタリアはギリシャではない。製造業、それもとくに中小企業が健全だった国である。だがそれも、あらゆるハンディに耐えて保っていた努力の成果であったのだ。原発全廃を決めた代わりに原発大国フランスから買うので、やたら高い電気料。加えて製品の売れ行きの激減。銀行は貸し渋る一方だし、失業率は公式には十パーセントでも実際はその二倍。これでは「成長路線」も、いかに唱えようとも山びこでしかなくなり、取れるところからとるだけ取る「税」の重要度は上がる一方になりそう。
 このイタリアの近未来の最も悪いケースを予想するとしたら、財政健全化のチャンピオンとして世界の識者たちから賞賛を浴びて花道から去っていくモンティと後に残されて成長なしの緊縮に押しつぶされるイタリア人、になるだろうか。ローマの郷土料理が売りのレストランのメニューに次の一句が書きそえられていた。

「食うことぐらい存分にやろうよ、モンティが許してくれるまでとしても」  2012/11/24

(引用終わり)
 自分が文藝春秋のこのコラムを読んだ時、なんの先入観もなしに読み初めました。
だから、これを紹介するときは、先入観なしに読んでもらったほうがいいかなとともって、いきなり、引用から始めました。
 そして、読んでいてイタリアの酷い現状に引きこまれました。
選挙で選ばれずに選出されたモンティ首相、いつの話?と思ったら、今現在の話なんですね。
 財政危機にあるイタリアでは、今、重税政策を行なっているようです。
無軌道な国債発行、放漫財政のツケのせいでしょうか。

(イタリアの財政危機の原因については→ 欧州財政危機にみるそれぞれの事情 - ギリシャ、スペイン、アイルランド、イタリアの場合にあります。政府債務残高がGDPの約120%と積みあがったこととあります)

重税によって消費は落ち込み、失業者が増え、失業手当が増え財政が厳しくなるという、悪循環に陥っているとのこのと。 
これを読んだ感想は、うわ、ひでえでした。

地獄のような光景…ゴミに埋もれてしまった世界遺産ナポリ(らばQ)

上のリンクと合わせて見ると、イタリアとは政治の失敗した国だという印象を持ちました。

イタリアの重税とは反対の文章を見つけました。
塩野七生が叩かれる理由 08/04/04
このブログのコメントで
イタリヤ人は所得の半分程度の所得申告しかせず、国民総所得の実際は、公表規模の2倍に達するというのが常識。ムッソリーニ時代の戦争のやりかのダラシなさ、加えて、戦後、数回の経済危機を云々されながら、国としての破綻はありませんでした

 重税でも、所得把握が半分ならまだマシななのかと思ったけど、
2008年の記事だから、今は総背番号制で所得全額が捕捉されてるのかな。
日本でも導入されるみたいな話だあるけど、どうなるんでしょね。
所得把握されて一番困るのは、政治家とか金持ちの人か?w

自動車を買っていちいち、なんで買ったか私営の税務署に聞かれるなんて嫌すぎる。。

モンティの緊縮政策は失敗だっんだろうか。
マリオ・モンティwiki
を見てみると、 300億ユーロ(110円/eurで3兆3千億円)の緊縮財政をし、市場の信頼を取り戻したとあります。
引用↓
年金支給年齢の引き上げや付加価値税の2%増税、株式金融商品・贅沢品に対する課税、議会議員定数の10人への削減、公選制州政府公務員に対する給与の廃止[20]などを盛り込んだ、総額300億ユーロに及ぶ緊縮財政策を発表[21]。「この緊縮財政対策がなければ、ギリシャと同様の事態に突入し破たんしていたかもしれない」[22]と表明した。2012年6月27日には企業が業績悪化時に従業員を解雇できるよう定める代わりに失業手当を拡充させる労働市場改革法を成立させた[23]。このころ支持率は3割程度となっていたが[19]一連の構造改革により国際社会に対するイタリアの信頼は徐々に回復していき、金融経済情勢を落ち着かせることに成功した
引用↑
 例えとして、溺れてる人は、重い頭を水面からあげようとして、パニックを起こして水を飲んで死ぬとか。また、泳ぎの下手な人は、重い頭を水面より高くあげて、反動でカラダが大きく沈んでうまく泳げないんですよね。
 よくわかからない例えかもしれませんが、緊縮もありかなと。学のない者のたわごとですけどね。
景気が悪いといって、カネを刷りまくって、無理に頭をあげようとして、ばたつくより、一旦沈んだほうが浮かびやすいということもあるのかななんて。。どっかで身の程の生活にしゅうれんされるんであって、身の程を上回る贅沢をしたら、当然その借金のつけを払わなきゃいけないときはくるわけで。。
 それに、安倍さんは、会社は投資をして会社を起こし、投資をして利益を上げるんです。借金が悪いというのは間違ってるんです、というけど、 借金しないと生活できない状態で、借金をして良い生活をしようというのは間違ってるんじゃないのかな。。オカネを刷って経済成長というのが、頭の中で理解できないだけなんですけどね。。

 EUの国は自分で通貨を刷れないから、緊縮と増税と他国からの財政支援しか財政再建の手段がないんでしょうね。これ以上借金しちゃダメな人たちだから、国内経済は大変でもまともな対応と思いますけど、
日本のようにどれだけでもオカネだ刷れちゃうと、財政危機が先送りになって、それはそれで危ないんじゃないかと思ったりします。。財政健全化を目指すなら、やっぱり削るところを削って、取るところから取らないと。。
でも、よっぽど切羽詰らないと、経済失速上等で緊縮財政なんてしないでしょうね。

それで、アメリカみたいに借金するだけして、もう倒れるぅー倒れたら世界大変だよ、という脅迫で、借金チャラにしてしまうかもなんて、ちょっと思いました。そうなると、正直に緊縮していた者が馬鹿をみる形になりますね。。

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